5月の筏で挑んだ初アオリイカ、400円餌木はボウズで終わった
「今からでも間に合う」と信じて5月の筏を選んだワケ
エギング解禁シーズンの終わり際に飛び込んだ理由
エギングの解禁時期というのは春先から始まって、ゴールデンウィークを過ぎたあたりでもう「そろそろ終盤」みたいな空気が漂い始める。私がアオリイカに手を出したのはまさにその終わり際、5月に入ってからだった。
ネットで調べれば調べるほど「本命は3月〜4月」「5月はもう厳しい」みたいな記事が目について、正直ちょっと及び腰になった。でも仕事の都合でどうしてもその時期しか筏に乗れる日がなかったし、「間に合わなくはないはず」と自分に言い聞かせて予約を入れた。今思えば、この時点で少し無理があったのかもしれない。
川釣り・海釣り歴はあるのにイカは未経験だった話
子どもの頃からずっと釣りをしてきた。川ではブラックバスやニジマス、アマゴを追いかけ、海に出ればグレやクロダイ、アジやハゼを釣ってきた。餌釣りもルアーもフライも一通り触ってきたつもりだったし、社会人になって一度離れた釣りを最近また再開してからも、そこそこ手応えのある釣果は出せていた。
でもアオリイカだけは、なぜかずっと避けてきたジャンルだった。専用のタックルが必要そうだし、エギングという言葉自体がどこか敷居高く感じていた。だから今回が完全な初挑戦。魚とイカでは勝手がまるで違うということを、この日思い知ることになる。
迷った末に選んだ400円の餌木、その理由と小さな後ろめたさ
高いエギとの値段差を見て「まずはこれで十分」と思った瞬間
釣具屋のエギコーナーに立った瞬間、値段の幅に面食らった。1000円を超えるものがずらりと並ぶ中、隅のほうに400円くらいのものも置いてある。カラーバリエーションはそこそこあるものの、いかにも「入門用」という佇まいだった。
初めてのジャンルにいきなり高い道具を突っ込むのは性に合わない。川釣りでも海釣りでも、最初は安い仕掛けで様子を見て、必要だと感じたら上のグレードに手を出す、というのが私のやり方だった。だから今回も「まずはこれで十分だろう」と400円の餌木を手に取った。財布への優しさも正直あった。
色もサイズも適当に選んだツケが後で気になり始める
選んだ色は、なんとなく目についたオレンジ系。サイズも「3.5号くらいが定番らしい」という情報を鵜呑みにして、深く考えずにレジに持っていった。
筏に乗り込んで準備をしている段階になって、ふと不安がよぎった。潮の色に合わせて派手系か地味系かを選ぶとか、その日のアオリイカのサイズに合わせて号数を変えるとか、そういう調整があるらしいという話を後から思い出したのだ。買った時点ではまったく気にしていなかったのに、いざ竿を出す直前になって「これでよかったのか」という後ろめたさがじわじわ湧いてきた。準備不足を自覚しながら海面を見下ろす、なんとも落ち着かない開始だった。
筏の上で過ごした数時間、当たりのない静けさ
潮も風もそこまで悪くなかったはずなのに
筏に乗った日は、風もそれほど強くなく、潮の動きも悪くない部類だったと思う。少なくとも過去に海釣りをしてきた経験からすると、「今日はダメそうだな」と感じるコンディションではなかった。むしろ「これなら期待できるかも」と思っていたくらいだ。
それなのに、餌木を投げてもしゃくっても、まったく反応がない。波音と筏がきしむ音だけが響く中、時間だけがゆっくり過ぎていく。魚釣りなら多少なりともアタリの気配や小さな引きがあるものだが、イカ特有の「乗ってるのかどうか分からない」あの独特の静けさに、正直かなり戸惑った。
シャクリのリズムがずっと自己流だったことに途中で気づく
動画で予習したつもりだったシャクリも、実際にやってみると全然違う感覚だった。竿先をしゃくって糸を巻いて、を繰り返しているうちに、自分のリズムがどんどん我流に寄っていくのが分かる。魚釣りのルアーアクションの感覚を無意識に持ち込んでしまい、なんとなく「動かしすぎ」なテンポになっていた気がする。
途中で「あ、これ多分ズレてるな」と気づいたものの、正解のリズムが分からないまま試行錯誤するしかなかった。結局、修正しきれないまま数時間が過ぎていった。
隣で常連さんが上げた一杯を見て感じた「差」
同じポイント、同じ時間帯なのに何が違ったのか
同じ筏、同じような時間帯で竿を出していた隣の常連さんが、ふっと竿を立てたと思ったら、すっとアオリイカを抜き上げた。私からすればその一瞬の動きに何の予兆も感じられなかったのに、向こうは迷いなく合わせていた。
同じ場所、同じ潮、同じ空気の中で竿を出していたはずなのに、この差はいったい何なのか。単純に運がいい悪いの話では片付けられない何かがある、とその場ではっきり感じた。
話しかけて聞いた「餌木より大事なこと」
悔しさ半分、好奇心半分で思わず話しかけてみた。「餌木、何を使ってるんですか」と聞くと、意外にも特別高価なものではなく、私が持っていたものとそう変わらない価格帯のエギを見せてくれた。
それよりも、着底の取り方とフォールのさせ方、あとは「イカがいる層を探る感覚」の話を丁寧にしてくれた。餌木の値段よりも、動かし方と待ち方のほうがずっと大事だという話だった。正直、道具のせいにしかけていた自分が少し恥ずかしくなった瞬間だった。
ボウズで帰る船の上で、とほほと笑いながら考えたこと
400円の餌木が悪かったのか、腕が悪かったのか
結局その日は最後まで一度もアタリを感じることなく、竿を仕舞う時間がきた。帰りの船の上で荷物を整理しながら、「400円の餌木が悪かったのか、それとも腕が悪かったのか」と自問自答していたけれど、答えはもう分かっていた。
隣の常連さんが似たような価格帯の餌木で釣り上げていたのを見てしまった以上、道具のせいにする言い訳は成立しない。単純に、シャクリもフォールも探り方も、全部が自己流のまま突っ込んでしまった結果だ。とほほ、と声に出して笑うしかなかった。
次はどんな作戦で挑みたいか、今のうちに書き留めておく
悔しいけれど、収穫がなかったわけではない。今回学んだことを忘れないうちに書き留めておきたい。
まず、シャクリとフォールの基本をもう一度きちんと動画や本で学び直すこと。次に、色や号数を適当に選ばず、その日の状況に合わせて選ぶ視点を持つこと。そして何より、餌木の値段よりも動かし方に神経を使うこと。次に筏に乗るときは、この3つを意識して、今度こそボウズを回避したい。
川釣りも海釣りもそれなりにやってきたつもりだったけれど、イカ釣りにはイカ釣りの理屈があると、身をもって知った一日だった。

